いまこそヒュッゲに学ぶ“心地よい暮らし”をつかむヒント -#2 北欧の若者に聞く「北欧と日本のヒュッゲ」-
今までと違う生活が求められる中、おうち時間をもっと楽しみたいけど、どうしたら良くなるんだろうと思ってばかり。これまでCONNECTでは、北欧のインテリアを通じて心地よい暮らしづくりに役立つ情報をお伝えしてきましたが、インテリアだけではない心地よさの本質を改めて考えました。いまこそ北欧のヒュッゲな暮らしに学べることがあるんじゃないか。
そこで、これまで知り合った北欧の人たちにインタビューしながら、“本当に心地よい暮らし”をつかむヒントを見つけていきたいと思います。第2回となる今回は、北欧の若者に聞く「北欧と日本のヒュッゲ」です。改めて聞くと、ヒュッゲのイメージが変わる気づきがありました。どうぞお楽しみください!
前回のブログ「#1デンマーク流ステイホームの過ごし方」
北欧と日本を知る3人の若者に聞きました
写真左:Josefine Bols(ヨセフィーネ)デンマーク出身
Ada Zalecka(アダ)スウェーデン出身
Juliette Ringrose(ユリエット)ノルウェー出身
北欧出身で日本に滞在経験のある3人にインタビューをしました。CONNECTのある香川県丸亀市に数か月滞在し、日本家屋の調査や空き家リノベーションの計画などCONNECTと一緒に活動し、日本の文化に触れたことのあるKADK(デンマーク王立建築デザインアカデミー)の学生たち(現在は卒業生)です。
インタビュアーは前回に引き続き、デンマーク滞在経験があり、デンマーク語ペラペラの今泉さんです。今泉さんが日本人から見て感じたことも少し聞いています。
北欧の人にとって「ヒュッゲ」とは
「ヒュッゲ」とは、デンマーク語の辞書で「快適、安らかでリラックスした雰囲気を体感する、またその空間を作る」という意味。デンマークではこの言葉を聞かない日はないほど、生活に深く根付いた、いわばアイデンティティのような言葉だそうです。2017年ごろから日本でも注目され、北欧の暮らしと合わせて多く紹介されています。改めて、北欧の人にとっての「ヒュッゲ」について生の声を聞きました。
Q.ヒュッゲに欠かせないものはありますか?
A.
〈ヨセ〉心身ともに快適な状態であること。調和と平穏。デンマーク人はおいしいごはん、ケーキ、コーヒー、お酒がとても好きです。ここ数ヶ月で、「コロナ・キロ」という新しい言葉ができました。デンマーク人は家にいてヒュッゲが多すぎると、みんな食べ過ぎて、少し太ってしまいます。
〈アダ〉よい仲間、よい雰囲気、信頼感や安心感です。
〈ユリ〉たくさんありますが、例えばおいしい食べ物や、「ヒュッゲな」場所、「ヒュッゲな」人々は欠かせません。
Q.ヒュッゲだなと感じるのはどんなときですか?
A.
〈ヨセ〉ひとりでも、誰かと一緒でもヒュッゲできます。ひとりの時は、キャンドルをつけて美味しい食事を作るのが好き。自分への愛情表現として、とても大事なことだと思っています。コロナ禍では家でよくヨガをしています。リラックスできる服装で音楽を聴きながら、身体を動かすのがとてもヒュッゲな時間。誰かと一緒にヒュッゲするときは、だいたいおいしいものを食べてたくさん話しています。今住んでいるのは小さな田舎町で、本当に美しく、家族や友人を招いて、森や海岸沿いを長く散歩するのが大好きです。
〈アダ〉よい仲間たちと、よい気分でいるとき。そして、日常の些細なことが実はとても大切です。
〈ユリ〉うれしい気持ちでリラックスしているとき。
〈今泉〉私がデンマークの生活でみたヒュッゲは、家族との触れ合いの中に多かったので、世代によってもヒュッゲの仕方が変わると思います。
◇「コロナ・キロ」は日本の「コロナ太り」と同じかなと思うと親近感が湧きますね。今まで、「ヒュッゲ」といえば「キャンドル」みたいなイメージがあったんですが、ヒュッゲに欠かせないのは何か1つの物ではなくて、心と体の両方が気持ちよく、喜んでいる状態なんだなと感じました。
日本の「暮らし」と「ヒュッゲ」について
Q.日本の暮らしで良いと思ったところはありますか?
A.
〈ヨセ〉日本人は、人々が助け合い、個人より社会全体を考えることに長けていると思います。とても忍耐強く勤勉なことは日本社会の良い素質で、デンマーク人が学ぶべきことがあります。また、日本人はレストランなど都会的な場所で集うのが得意だと思います。
〈ユリ〉日本では多くの人が、自分の仕事にとても誇りを持っていると感じました。また、日本の食文化も本当に素晴らしいです。大切にしていくべきたくさんの良い伝統があります。
◇ 日本人から見ると、北欧の人たちのほうが仕事に誇りを持っているように見えたりしますが、外から見るのと、内で感じるのは違うのかなと思いました。ただ、日本の食や文化に良いところがたくさんあるのは間違いないです。
Q.日本の暮らしで疑問に思ったことはありますか?
A.
〈ヨセ〉日本人はもう少し休息を取ってもいいかもしれません。時には仕事を休むことが脳や体や心にも良いからです。そして想像力が湧いてきたり、友人や家族に会うことで良いアイデアを得られるかもしれません。
〈ユリ〉日本では、仕事で求められることが多すぎます。働きすぎは不健康です。また、父親に比べて母親がしなければいけないことが多すぎます。日常生活の中でバランスが大事です。北欧でも、ジェンダーがより平等になるための働きかけが続いていますが、日本は男女平等への道のりが北欧よりも長いと思います。
◇ コロナによって日本でも導入が加速したテレワークや働き方改革で、これから日本の働き方や暮らしがどう変わっていくのか、これを機に前向きに変えていく必要があるなと改めて感じました。
Q.日本の暮らしでヒュッゲだなと感じたことはありますか?
A.
〈ヨセ〉茶道、畳、古民家の薄暗い明り、食事のときに集中すること。日本人は時間をかけるべきところにしっかり時間をかけるのに長けていると思います。リラックスするほど、よりヒュッゲできるようになっています。
〈アダ〉年上の人と年下の人の良い関係性。お互いを敬い、自分のことより相手のことを思っているように感じます。
〈ユリ〉畳、茶道はヒュッゲだと思います。日本ではヒュッゲなことが次から次に起こりました。例えば、友人との食事や、何気ない素敵な瞬間など。
◇ 北欧の人から見ると、日本のヒュッゲは禅やマインドフルネスなど、精神的に満たされて穏やかな状態に通じるのかもしれません。彼女たちは本島の古民家再生に携わっていたので、畳や古い生活様式の良さをよく知っています。私は茶道と聞くと緊張してしまいヒュッゲとは少し違うかなと思ったのですが、今の暮らしではおざなりにしていること、例えば食事に集中することや、しっかり時間をかける茶道の間合いの心地よさなど、日本文化の良さを気付かせてくれたように思います。
Q.ヒュッゲについて、北欧と日本で解釈が違うなと思うことはありますか?
A.
〈ヨセ〉日本で商品名に「ヒュッゲ」とついているものが売られていて少し驚きました。ヒュッゲは買えるものではなく、人が感じるものだと思っています。
〈アダ〉必ずしも言葉で表現しなくてもいいのかもしれません。日本には「ヒュッゲ」に該当する言葉は存在しないかもしれないけれど、同じものはあるんじゃないかと思います。人と人が共有するある瞬間や、ある感情が「ヒュッゲ」。もちろんひとりでいてもヒュッゲできます。
〈ユリ〉ヒュッゲはとても広い意味を持ち、もしかすると多くの日本人が感じているほど具体的ではないかもしれません。何かを買えばヒュッゲができるわけでもなく、ヒュッゲは感情です。人がヒュッゲできるのは、その人がよい状態であることを意味します。日本や日本語にも、同じことを意味する言葉がきっとあると思います。
〈今泉〉以前デンマークについての番組を見た日本の友人に、「ヒュッゲって椅子を買うことなんですよね」と言われました。ヒュッゲのコンセプトの説明は難しく、日本で紹介するときにヒュッゲを無理矢理定義した結果、誤解が生まれてしまっているように感じます。
◇ ヒュッゲという北欧の言葉と文化が日本に紹介されて、それがとても魅力的で、まず形から入ってしまい、何か買えば手に入れられるような解釈になってしまったのかなと思いました。「ヒュッゲ」はもっと広いもののようです。
日本にもヒュッゲはあふれている
ヒュッゲを日本語には訳せないと言われますが、3人のお話を聞いて、ヒュッゲとは「あ~幸せ~」って言いたくなる状態のことなのかなと思いました。例えば、鍋をみんなで囲んだり、旅先で温泉につかったり、炊きたてのごはんを食べた時も「日本人でよかった~」って思うことはたくさんあります。
ヒュッゲは何かを買って作り出すものではなくて、見つけるもの・感じるものなのかなと学びました。その瞬間をより良くするために、部屋を整えたり、お気に入りのものを取り入れたりすることももちろん大事ですが、日常の中にあるヒュッゲを見つけて、その瞬間を大事にすれば、もっと日々の暮らしにヒュッゲがあふれてくるんじゃないかと気づかせてくれました。
先日CONNECTのインスタで連休の過ごし方をみなさんに質問させてもらうと、たくさんの素敵な過ごし方を教えてくれました。おうちでゆっくりごはんや珈琲、家飲みを楽しんだり、お出かけしたり、もうすべてがヒュッゲ!改めてお話しなくても、みなさんすでにヒュッゲを楽しまれていたことに驚き、嬉しくなりました。私もどんどんヒュッゲするぞとワクワクしてきました。
次回予告
次回のテーマは、北欧の若者たちに聞いた「ヒュッゲな空間と時間」です。ヒュッゲは日々の暮らしで感じるものと学びましたが、やっぱり本場のヒュッゲはどんな様子か気になります。今回インタビューをした3人に、北欧の今の生活で、どんなヒュッゲな空間でヒュッゲな時間を過ごしているのか詳しく聞いてみました。ぜひお楽しみに!
【連載予定】
いまこそヒュッゲに学ぶ “心地よい暮らし” をつかむヒント
#1 デンマーク流ステイホームの過ごし方
#2 北欧の若者に聞く「北欧と日本のヒュッゲ」
#3 北欧の若者に聞く「ヒュッゲな時間とインテリアの考え方」
#4 今泉さんのデンマーク留学滞在記
#5 ヒュッゲのヒント①物より時間
#6 ヒュッゲのヒント②優先順位を自分で決める
#7 ヒュッゲのヒント③広く長い視点で考える
#8 まとめ
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この記事を書いた人
CONNECT
こんにちは。ライフスタイルショップ「CONNECT(コネクト)」です。北欧のブランド(ルイスポールセン・フリッツハンセンなど)を中心に照明・家具・ヴィンテージ家具やインテリア雑貨をセレクトし、販売しています。 また、インテリアから考えるお家づくりも手がけています。