デンマークを代表する家具デザイナーとして、日本でもよく知られているHans J. Wegner（ハンス J. ウェグナー）。
ウェグナーがデザインした中で、最も有名な椅子として「CH24（Yチェア）」が挙げられます。Yチェアは1950年にデザインされ、途切れること無く生産され続けているウェグナーの代表作です。
世界中で愛され続ける椅子を数多く世に生み出し、「椅子の巨匠」と称されるハンス J. ウェグナーとは、どんな人物だったのでしょうか？

▲ウェグナーの代表作「CH24（Yチェア）」
CARL HANSEN & SON （カール・ハンセン＆サン）/ CH24 / Yチェア（ワイチェア） ビーチ材・ソープ仕上げ SH45cm 

 

 

 

ハンス J. ウェグナーの生い立ち

▲Hans J. Wegner（ハンス J. ウェグナー）/ 1914～2007年 

ハンス J. ウェグナーは、1914年に靴職人の父の元、デンマークとドイツの国境の町、トゥナーに生まれました。
14歳で家具職人に弟子入りし、17歳で木工マイスターの資格を取得。
アルネ・ヤコブセンとエリック・モラーの建築事務所に勤めた後、1943年に自身のデザイン事務所を開設。
生涯で500脚以上の椅子をデザインし、その作品はMOMA（ニューヨーク近代美術館）など、世界中の著名な美術館でコレクションされています。

 

 

 

木材への深い造詣と”家具職人”であるということ

「物事をできる限りシンプルで純粋に表現すること…、木に魂と生命力を与えること」という想いを持っていたウェグナー。
幼い頃から木を削ることが好きで、彫刻家を夢見ていたそうです。10代の頃に作った木材の彫刻では、すでに非凡なセンスを発揮していました。
のちに家具デザイナーとなった後も「自分はデザイナーである前に、家具職人である」と語ったウェグナーですが、PPモブラー創業者の一人であるアイナ・ペダーセンから、「ウェグナーは私が今まで出会った中で最も熟練したキャビネットメーカーだ！」と言わしめる程、職人としても優秀でした。

 
▲背もたれに施された十字型のパーツは、上下左右に組み合わせた木材の接着の強度を高めると同時に、美的要素も兼ね備えています。木を知り、木を愛したウェグナーならではのデザイン。
「PP701」/ PP Mobler（PPモブラー）ウォルナット材・オイルフィニッシュ / エルモソフトレザー / ブラック

 

 

美しい椅子のつくり方

デザイン事務所を立ち上げてからも、様々な作品をデザインするにあたり、図面だけではなく自らの手で模型製作するなど、実際によく手を動かし続けました。
「人の身体に最も近い家具」「小さな建築」と言われる椅子。
図面上だけのデザインではなく、日常で使用することを前提に、強度はもちろんのこと木の美しさや特性などを職人たちと工房で頻繁に意見を交わし、良い意見は取り入れながら、品質に関して一切妥協せずに作品を作り上げたと言います。

 

 

 

リ・デザインと深化

コペンハーゲン美術工芸学校に在籍していた頃、「リ・デザイン」という方法論を学びます。
伝統を切り離すのではなく、現代の暮らしに合うように改善を図る考え方です。
「ウィンザーチェア」をリ・デザインした「ピーコックチェア」、中国の明時代の椅子から発展した「CH24（Yチェア）」など。
さらに自作をリ・デザインし続けることでより深化を重ねながら、500脚以上の作品を作り上げることで、より完成度の高い椅子が出来上がっています。

「デンマーク家具デザインの父」と呼ばれるコーア・クリントは、「リ・デザイン」を確立した人物でもありますが、クリントが残した「古典は我々よりもモダンである」という言葉からは、先人が残したものに対する尊敬の念を感じます。

photo by PP Møbler official website

▲Yチェアの元となった中国の明時代の椅子（奥）と、それをリ・デザインした「PP16（チャイニーズチェア）」。
PP66 Chinese Chair（チャイニーズチェア） / アッシュ材・ソープ仕上げ / ナチュラルペーパーコード

▲ウィンザーチェアをリ・デザインしたピーコックチェア
PP Mobler（PPモブラー） / PP550 Peacock Chair（ピーコックチェア） / アッシュ材・ソープ仕上げ / ナチュラルペーパーコード

 

 

 

「椅子は、そこに人が座ったときに初めて完成する」

家具は芸術作品ではなく、日常で使うものと考えていたウェグナー。
見た目のデザインだけでなく、より快適な椅子を作るため、エルゴノミクス（人間工学）の考えを積極的に取り入れました。
医学博士の協力のもと、人間の脊椎のX線画像に基づいて、背もたれが腰から背中にどのように影響するのかを考えたデザインというのは、当時では非常に珍しいことでした。

 

 

 

“手で見る”　デザイン

ウェグナーならではのフォルムや美しい接合部を創り出す基盤となっているのは、家具職人としての技術と知識。
そして美的センスは、木材への深い造詣と、天然素材への探究心がベースとなっています。
人が座るときや立ち上がるとき、掃除するときには、ふとアームや背もたれを触るからこそ、手の感覚を大切にしながらデザインしたウェグナー。
日常で使う道具であるからこそ、日々の使い心地と360°どの角度から見ても美しさを求めた、デザインセンスと構造的な永続性。
これがウェグナーならではの、シンプルでありながらぬくもりのある、オーガニックなフォルムを創り出しているのです。

▲緩やかなカーブと優しい丸みを持たせたアームは、手や肘を置いた際にも心地よい◎

 

 

 

ウェグナーの名作椅子・CONNECTスタッフおすすめ5選

PP19（パパベア）ラウンジチェア / PP Mobler（PPモブラー）

オーク材・クリアバイオオイル仕上げ / Moss 0016（モス）
W900×D950×H1010（約mm）
SH420 / AH650（約mm）

 

▼PP19（パパベア）をもっと詳しく知りたい方はこちら

 

 

PP701 チェア/ PP Mobler（PPモブラー）

ウォルナット材・オイルフィニッシュ / エルモソフトレザー / ブラック
W630×D460×H700（約mm）
SH450（約mm）
アーム：H670（約mm）

 

▼PP701チェアをもっと詳しく知りたい方はこちら

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PP68 チェア/ PP Mobler（PPモブラー）

ビーチ材・ソープ仕上げ / ナチュラルペーパーコード
W580×D470×H720（約mm）
SH440（約mm）
アーム：H680（約mm）

 

CH24 / Yチェア（ワイチェア）/ CARL HANSEN & SON （カール・ハンセン＆サン）

チーク材・オイル仕上げ / ナチュラルペーパーコード
W550×D510×H760（約mm）
SH450（約mm）

 

▼CH24（Yチェア）をもっと詳しく知りたい方はこちら

 

 

CH78 ラウンジチェア / CARL HANSEN & SON（カール・ハンセン＆サン）

オーク材・オイル仕上げ・Fiord（フィヨルド）0271
W840×D800×H1060（約mm）
SH400 / AH625（約mm）

 

 

 

ウェグナーの言葉

「私の作品は芸術作品ではありません。日用工芸品なのです。ですから、手で触ってください。座ってみてください。そして、よく見てください。曲線を手で追い、つなぎ目を見て、私の心の流れを感じ取ってください。体をとおして、耳を澄まして、作品が私の言葉で皆様に話しかけている物語をぜひ感じ取って欲しいのです。
しかし、最初から私の心の物語が一挙に語られるというよりも、どちらかと言えばそれは使っているうちに少しずつ伝わってくるでしょう。ですから、ぜひそうされることをお勧めいたします。」

1998年の第8回国際デザイン・アウォード受賞の際に日本へ向けたウェグナーの言葉からは、家具デザイナーとして、そして家具職人としてのウェグナーの想いが感じられます。

 

 

 

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