椅子の巨匠ウェグナーが自邸のためにデザインしたダイニングチェア PP701
ハンス J.ウェグナーが、自邸のダイニングルーム用にとデザインした「PP701ミニマルチェア」。
ステンレスのフレームと、背もたれからアームにかけての笠木のデザインが美しい、コンパクトなダイニングチェアです。
普段から多くの名作椅子に接しているCONNECTスタッフや、家具に精通している専門家からも人気が高い椅子です。
一見スタイリッシュでかっこいい印象が強い椅子ですが、よくよく細部を観察してみると、ウェグナーの「木」や「家族(妻)」に対する想いを随所に感じられる愛のあるデザインです。ウェグナーの妻インガさんが最も気に入っていたのもこのPP701だったと言われています。
今回はそんな魅力的なPP701ミニマルチェアを、PP Møbler(PPモブラー) 社での製作風景も含めてご紹介していきたいと思います。
1.PP701ミニマルチェアのルーツ
▲ウェグナーの自邸
└ 壁の石ひとつひとつの配置、キャビネット、窓、ドア等、家の細部に至るまでデザイン。ウェグナーは、91歳までの40年間をこの家で暮らしました。
この椅子がデザインされたのは1965年、ウェグナーが51歳の時です。
当初、自邸で使うためだけにデザインされた椅子でしたが、Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)社からの要望で製品化(JH701)されました。同社が廃業した後、ウェグナーが全幅の信頼を寄せていたPP Mobler社で製造されるようになります。
▲PP518 Bull Chair(ブルチェア) / オーク材・ソープ仕上げ / スタンダードレザー / ブラック
PP701のデザインの元になっているのは、PP518ブルチェア。この椅子をよりシンプルに解釈し直したミニマルバージョンとして、デザインされています。背もたれからアームの形状、両アームを繋ぐ中央のジョイント部分(契り)に共通した要素が見受けられます。
2.PP701ってどんな椅子?
特徴①ステンレススチール製のフレーム
▲PP701 チェア / アッシュ材・ソープフィニッシュ / エルモソフトレザー / ブラック
フレームは、ウェグナーの作品の中でも数少ない、ステンレススチール製(ヨーロッパ製の最高品質のものを使用)です。職人の手により表面をきれいに磨き上げており、光沢が抑えられたソフトマットな質感です。丈夫で傷がつきにくく、水にも強いので錆びることもありません。
上部がわずかに湾曲しており、人間の身体に沿うように、という配慮も感じられます。
重さも4.2kgと軽量ですので、女性やご年配の方でも軽々と持ち上げられ、お好きな場所に移動して使っていただくのに便利です。ウェグナーも、自身と妻の将来を見据えて軽量なデザインを選んだのかもしれませんね。
特徴②最小限の木材でつくる美しく機能的な背もたれ&アーム
樹齢100年前後の木から切り出した板から、4枚の無垢材を削り出し、中央の下部と上部・左右のアームレストが、それぞれ対になるようにカットされ、繋ぎ合わされています。
大きな木材から1つの部材を削り出すのではなく、わざわざ4つの小さなパーツを組み合わせた構造にしているのは、木材を有効活用するため。木を知り、木を愛するウェグナーならではの発想です。そして、当然この構造にするためには職人による多くの手仕事が必要となります。
これは、左右対にカットされた無垢材を、中央の十字のパーツ(契り)でつなぎ合わせているところです。
木目が左右対称になるように、手間をかけて選び抜いた木材を使用しています。
十字のパーツには2つの木材をしっかりと接合する意味合いと、2つのパーツの木目が繋がらない為、敢えて色の異なる別の材を挟むことで、デザインのアクセントとしての要素も兼ねています。また、この十字のデザインは、ウェグナーの母国、デンマークの国旗も彷彿とさせます。
また、アームの部分から背もたれにかけて、水平から垂直へと移り変わる見事な曲線美がこの椅子をより印象深いものとしています。触ると非常になめらかで、職人によって丹念に研磨されていることがよく分かります。
ハーフアームのため、テーブルに半分ほど椅子を収納することができ、見た目もすっきり。
アームに肘を置いてゆったりと座ることもできる、機能的な椅子です。
テーブルの天板にアームをひっかけると脚が浮くので、掃除も簡単です!
特徴③裏まで美しい座面
座面で特筆すべきなのは、その裏側です。座板の端から数センチ内側に溝を掘り、張地をタッカー(コの字型のステープル針を打ち込む、ホッチキスのような工具)で留めています。その上からペーパーコードでぐるりと1周埋めているので、留め具が見えません。
「家具には裏面があってはならないのです。(中略)
あらゆる角度から観察されて、どの側面も視線に耐えうるものでなくては。」
というウェグナーの言葉通り、美しく仕上げられています。
また、座面を簡単に取り外して修理ができるようになっているのも、長く使っていく上で嬉しいポイントです。
\CONNECTの社長によるPP701解説もぜひご覧ください!/
3.PP701ミニマルチェアのある暮らし
スタイリング例
▲色味の明るいインテリアに合わせると、スチールの脚やアームの曲線美がより際立ちますね。
▲ヴィンテージ家具との相性も◎味わいのある空間に。
お手入れ方法
PP701をきれいに長くお使いいただくための、お手入れ方法をご紹介します。
◆ 普段のお手入れ
・アーム(ソープ仕上げ/オイル仕上げ)、脚、座面(レザー)
水に濡らし固く絞ったやわらかい布で拭いた後、乾拭きする。
・座面(ファブリック)
ほうきや掃除機等で、埃を取り除く。
これだけのお手入れで、かなりきれいな状態をキープできます!
◆ 半年~1年に1度のお手入れ
・アーム(ソープ仕上げ)
薄めた石けん水に浸した布を硬く絞ったもので拭く。汚れがひどい場合は、泡立てた石けんで洗う。※参考ブログ
・アーム(オイル仕上げ)
家具用オイルをやわらかい布で塗装し、乾拭きして仕上げる。※参考ブログ
・座面(レザー)
レザー用クリームをやわらかい布で塗布し、乾拭きして仕上げる。
まとめ
今回はPP701ミニマルチェアについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
PP701は、ウェグナーの「木材への深い造詣」「家具づくりに対する人並外れた才能と情熱」「作る人・使う人・修理する人すべてに配慮し考え抜かれたデザイン」があってこそ実現できる椅子です。
そして、そんなウェグナーとともに妥協のない家具づくりに取り組んできたPP Møbler社の高い技術力が融合することで完成する椅子とも言えます。
作り手がこの椅子に込めた想いやこだわりを知ることで、かっこいいだけではない、PP701の奥深い魅力を少しでも感じていただけると嬉しいです。
\こちらのブログもご覧ください!/
【PP Møbler(PPモブラー) 世界最高峰の木工家具職人】
※納期について
PP701の現在の納期は、約4〜12ヶ月です。
小規模の限られた生産となるため、納期は都度お尋ねくださいませ。
おまけ
▲2017年にCONNECTの高木社長がデンマークのPP Møblerの工房を訪れ、当時の代表ソーレン・ホルスト・ピダーセンからPP701についての説明を受けている様子
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この記事を書いた人
ichikawa
松山ショールームスタッフです。 CONNECTで働くきっかけは、一脚のセブンチェア✨ インテリア初心者で日々勉強の毎日ですが、そんな私だからこそできる切り口で分かりやすい情報発信をしていきたいと思います。