イサム・ノグチ自身が「最高のデザイン」と認めたコーヒーテーブル
1944年にデザインされたこのコーヒーテーブルは、ガラスの天板や脚部がまるで生きているかのような有機的なフォルムで、彼の彫刻作品の1つのようでもあります。
この不朽の名作と呼ばれる「コーヒーテーブル」は、約75 年も前のデザインですが、今もなお新しさを感じることができます。
イサム・ノグチとは
イサム・ノグチの父は、詩人、英文学者の野口米次郎(ヨネジロウ・ノグチ)で、母は、作家、教師のレオニー・ギルモア。1904年にロサンゼルスで生まれ、3歳の時に母と来日後、神奈川県茅ヶ崎で少年時代を過ごしました。
世界中で称賛されたイサム・ノグチですが、幼少期から長く孤独を感じていたようです。1900年代初頭は今よりもハーフに対する風当たりが強かったこともあり、彼は、自分自身を日本人と思っていたけれど、「日本の人は、自分を西洋人だと思っていた」とよく言っていたそうです。
日本では自宅の新築設計を手伝うなど数々の建築作品に携わり、14歳で単身渡米。コロンビア大学医学部で医学を学びつつ彫刻家の助手やレオナルド・ダ・ヴィンチスクールに通い、彫刻を学びました。医学部時代には野口英世とも深く関りがあったようです。パリをはじめ日本やイタリアなど世界各地を旅しながら、各国で得た体験や技術を自身の作品に反映し、繊細かつ大胆、伝統的でありながらモダンという独自の作品世界をつくりあげていきました。
アトリエは、ニューヨークと香川県高松市牟礼町の2箇所にあります。こよなく讃岐の自然と石を愛し、CONNECTが拠点としている香川県を第二の故郷として県内各地に様々な作品を残しています。
今現在、アトリエは「イサム・ノグチ庭園美術館」となっており、今もなお芸術家たちに刺激を与え続けています。
ヴィトラが復刻したイサム・ノグチの意匠
2002年より、ヴィトラデザインミュージアムとヴィトラは、ニューヨークのイサム・ノグチ財団とともに、彼のデザインの復刻版を制作しています。日本でもイサム・ノグチの人気は高く、多くのリプロダクト品や類似品が多く出回っていますが、日本で正規品が買えるのはVitra(ヴィトラ)だけです。
リプロダクトやジェネリックと言われる(偽物の)コーヒーテーブルも形はよく似ていますが、つなぎ目の美しさや天板の厚み、全体のバランスを是非ともよく見ていただきたいです。多くの類似品はこの部分に大きな違いが生じます。この違いにこそ、イサムノグチが表現しようとした思いが宿っています。
有機的なフォルムとこだわりの意匠
不思議な脚の形は一見不安定に見えますが、専用の金具でしっかり固定されています。
イサム・ノグチは、日本の指物(さしもの)師のもとで見習い修行した経験を持っています。指物とは金釘を使わずホゾなどの技法を用いて木工を組み立てることをいい、日本独自の技法です。指物のように、棒状の金具を脚に差し込むことで、外側からは見えないように脚を固定しています。
天板は19mmの強化ガラス。とても存在感がありますが、ガラス天板が透明なのでそう広くないお部屋に置いても圧迫感を感じさせません。天板にはイサム・ノグチのサインが刻印されています。
脚部の素材はウォルナット、ブラックアッシュ、メープルの3種類。
コーヒーテーブルや座卓として、モダンなデザインでありながら和洋どちらにも馴染み、モダンでありながらもどこか懐かしさを感じる空間を演出してくれます。