曲線が作る、心地よさ。プライウッドチェアの究極のカタチ
アルネ・ヤコブセンによりデンマーク国立銀行のためにデザインされた “LILY”。
最初のモデルである3108は1968年に誕生し、1970年のデンマーク国際家具見本市でアーム付きの3208モデルが初公開されました。
完璧な曲線を備え、快適な座り心地を提供するリリーは、薄くスライスしたベニヤをラミネート加工するという非常に複雑な成形合板技術の集大成といえます。
2020年、ヤコブセンがデザインした最後のチェアであるリリーの50周年を記念して、デザインされた当時に製造していたナチュラルウッドモデルがウォルナットで復刻しました。
「新しくても、時間が経っても、愛おしく思えるイスがいい。」
「見た目は気に入ってるけど、座り心地はどうなんだろう・・・。」
「無難を選ぶならセブンチェアだけど、妥協はしたくない!」
リリーは見た目、座り心地、どちらにも妥協するポイントがないイスなんです。
初めて見たとき、座ったときの美しさとワクワクする気持ち。その感性を年月が経っても感じることができるチェア。
あれこれ座っても、リリーが圧倒的。と感じる、様々な美しさが込められています。
空間に息を吹き込む有機的曲線
角度によって表情を変える生き物を連想させるようなデザイン
“LILY (リリー)” は日本語で “百合の花”。
ヤコブセンは花が好きな母の影響で生涯自然に対する愛で溢れていました。
背もたれの細いくびれの先に広がる大きなカーブは、すらりとした茎の先に大きな花を咲かせる百合のようで、その背もたれに引き込まれるかのように身をゆだねると、柔らかくしなる背もたれは、風が吹くと花が揺れる様子を表しています。
アーム付チェアは、手を広げているペンギンに見えたり、羽ばたくカモメにも見えます。
時代を経ても “愛おしい”。その秘密は機能美
古くても新しくても、“愛おしい” と思えるデザインには、見た目の美しさだけではなく、機能美があります。
有機的曲線から生まれる、包み込まれるような安堵感で存分にくつろぐことができます。
リリーの最大の特徴である、体を包み込む立体的な曲面を成形合板で実現することは、セブンチェアやアントチェアなどよりも圧倒的に難しく、リリーが発表された当時(1970年)の技術では製造しても4脚に1脚しか製品として合格しないほど安定した製品化がままならず、数年しか製造されませんでした。
2007年、現在の技術でこの完璧なフォルムを実現し、復刻となるが、ナチュラルウッドモデルは表面に塵が出たりと他の仕様よりも悩まされる点が多く、復刻には至りませんでした。
発表されてから50年、幾度も試行錯誤を重ね、ようやくこの曲線が成形合板で実現したのです。
浮かんでみえるのに、一体感が感じられる心地よい隙間
背もたれとアームの絶妙な隙間は、アームの先端を握って座った時に二の腕がぴったりフィット。
腕を置きにいかなくても自然に支えてくれる、ちょうどいい位置にいてくれます。
シェルに沿ったフォルムで、フレームにまとわりつくように内側の側面まで入り込んだアーム。見た目だけではなく、心地よさもデザインされています。
どんな体勢にも寄り添う、曲面から生まれたやさしいアーム
どこに体重をかけても、曲面で受け止めてくれるので、滑らすように腕の位置を変えたり、横や斜めを向いて座ったとき、アームにもたれ掛かっても背中が痛くありません。
体勢に気を遣わず、ゆったりくつろぎを楽しむことができます。
自然なくつろぎをもたらす座面と背もたれ
ゆるやかな弧を描くシェル
ゆったり広い座面の湾曲は、セブンチェアやアントチェアと比べてみても一目瞭然。
ヤコブセンのデザインした作品は、過去、現在の優れた作品を参照し、それをもとに手を加え、応用させているものがあります。最終的に参照した作品を超越してくるのがすごいところ。まさにヤコブセンの集大成であり、彼の合理的で妥協を許さない性格があってこそ誕生するデザインなんです。
これほど複雑な三次元曲面は、再現しようとしても誰もまねできないでしょう。
太ももからお尻にかけての絶妙なカーブが、自然と重心を背もたれへと誘導してくれます。
細いくびれの先に広がる大きな背もたれ
背面と座面を一体化させるために、くびれを設けることでより柔らかいしなりを実現します。
このしなやかさと包み込むような曲面は、長時間もたれていたくなります。
ヤコブセンの描く三次元曲面を成形合板で実現
成形合板とは
薄い単板を板の向きが交互になるように重ね、型に入れて成形した合板のことです。プライウッドとも言われます。
製造はフリッツハンセン社の工場
「最高のクオリティの機能的家具を、工業的生産プロセスによって生産する」という理念に基づいて、無駄なく効率的な生産ラインが組まれています。
しかし、重要な作業は機械に頼るのではなく、やはり人手に委ねられています。使用する単板や接着剤にもこだわり、職人の目によるきびしいチェックが行われています。
一見すると同じようなプライウッドも、素材の品質や製造工程にこだわることで強度や美しさが生まれるのです。
製造工程
① プレス加工以前の単板は、型にはめられ、作業員によって切断。
② 切断された単板は、1枚1枚研磨。
③ 合板の曲げ加工には接着剤を用いず、10枚の単板を機械でプレス加工し、美しい曲線をつくる。
④ 表面の木材は良質な材(ウォルナット)を用い、その内側にインド綿を挿入することによって、衝撃による割れを防止。その内側に8枚の単板を縦と横に交互に重ね、合板がつくられる。
⑤ 合板は曲げ加工後に機械によって冷却され、パレットの上に重ねられ、48時間保管庫に置き、形を固定。
⑥ 塗装
⑦ 脚と座面の接合
脚はスウェーデンで生産されたものを使用します。
最後の仕上げ作業である、脚と座面を接合するためのボルト締めと商品のラベル貼りは製品のチェック兼ねており、作業員によって手作業で行われます。
倉庫を持たないフリッツハンセン社では、出来上がった完成品はただちに工場から出荷され、
徹底した受注生産方式による合理的なシステムを採用し、無駄のない在庫管理を行っています。
曲面を生かす、天然のウォルナット
ウォルナットは世界三大銘木として、チーク・マホガニーと並ぶほど希少で、その価値は高まる一方です。
成長が非常にゆっくりで建材として使用できるまでに100年以上かかる上に、良質で幅が広いウォルナット材を入手しようと思うと1本あたりからとれる量が限られてしまい、入手が困難で貴重な木材なんです。
歳月を経ても美しく
ウォルナットはクルミ科の広葉樹。英語でハードウッドと表現されるほど耐久性に優れており、キズがつきにくく、へこんだりしにくいのです。
耐久性だけではなく、木肌も初めはラフな手触りですが、使っていくうちに足や手によって自然と磨かれることで、次第になめらかになっていく、経年変化を楽しむことができます。
光と角度よって変化する表情
天然のウォルナットならではの独特な色のコントラストや流れるような木目は、他の樹種に着色しても再現が困難です。
重厚で落ち着いた色調が美しいウォルナット。サラサラとした手触りですが、マットで上品なツヤがあります。素材本来のツヤに加え、曲面でできたフォルムによって光沢と陰影が生まれ、光の色や強さ、角度によって違った表情を見せてくれます。
そのうえ、木目のコントラストがはっきりしていて、より豊かな表情を楽しむことができます。
組み合わせで際立つ曲線美
動きのある有機的なシェルと細くてまっすぐ無機質なクローム脚。リリーは緩やかな曲線と直交する線が絶妙に組み合わさって出来ていることがわかります。
ひとつの提案として、「直線と曲線」「有機質と無機質」を意識して組み合わせてみると「静と動」の対比が生まれ、それぞれの美しさをより際立たせてくれます。
フロアランプの光沢のある真鍮と、深みのある落ち着いた色調のウォルナットでラグジュアリーな雰囲気になります。
スラッとまっすぐ伸びたフロアランプとリリーの柔らかい曲線で、互いのフォルムを引き立てます。
直線的なヴィンテージのテーブルと合わせると、木のあたたかい印象がありながら、直線的なテーブルと曲線的なリリーの対比がアクセントになって、空間を引き締めてくれます。
テーブルは無機質なスチール製でありながら丸みがあるので、リリーの曲線と合わさると柔らかい雰囲気が生まれます。
リリーは、木目がはっきりとしていてツヤがあるので、マットなグレーに合わせると、お互いの質感が引き立ちます。
ヴィンテージ × リリー
赤味がかったチーク材と深みのあるウォルナットの色味が相性抜群です。
全体的に木でできた温かみのあるヴィンテージ家具と、ヴィンテージチェアにはないリリーの艶やかなクローム脚が、すっきりとモダンな印象を与えます。
SIZE
比べてみると・・・
FRITZ HANSEN
セブンチェア ウォルナット材
同じくウォルナット材ですが、柔らかいシルエットがゆえに、天然のウォルナット材ならではの上品な木目と色味から生まれる、モダンでラグジュアリーな雰囲気は軽減される。
CARL HANSEN & SON
CH26 オーク材(カバーキャップ:ウォルナット材) オイル仕上げ
座面に対して真っ直ぐ平行に伸びたアームが印象的。
試作品すら作られなかったほど製造が難しく、生産されていませんでしたが、2016年、復刻生産されました。
安定感がありしっかりとしていますが、しなやかさでいうとやはり、リリー。
CARL HANSEN & SON
Yチェア ウォルナット材 ブラックペーパーコード
無垢材ならではのしっかりとした安定感はありますが、リリーのような背もたれのしなやかさと柔らかさは表現できない。
アームの一体感は見られるが、肘の安定感はリリーが圧倒的。
まとめ
1, 時代を経ても美しい、有機的曲線美に潜む機能美。
2, 合理的製造システムとこだわりの素材によって実現された複雑な三次元曲面。
3, “光と角度” “対照的な組み合わせ” により、変化しながらひき立つ個性。
LILY復刻を記念した特別な仕様
50周年の特別なタグがつく記念モデル
実は今回、日本からデンマークへ復刻をリクエストして、リリー発表50周年を記念して復刻が実現しました。2020年限定で、座面の裏側には50周年の特別なタグがつく、記念モデルとなります。
床にキズがつくのを防ぐ専用の保護キャップ
立ったり座ったりするたびにイスをひくと、床にイスの脚が擦れ、イスへ振動がかかり、イスの劣化や床のキズの原因となります。
それを防ぐために一般的に使われるのが、イス専用のフェルトシートですが、イスの脚先は接着面が小さいため、使用しているうちにフェルトシートがはずれてしまうことがあります。
リリーには、床にキズがつきにくいよう、脚の先にゴムキャップがついています。
さらに、フェルトグライドという専用の保護キャップが別売で販売されています。(※注文時にフェルト有のレッグキャップをお選びいただくと、こちらで付け変えた状態でのお届けとなります。)
フェルト付きレッグキャップは、ゴムキャップの脚先が硬質フェルトとなっており、フェルトシートをつける手間もなく、はずれてしまう心配もありません。フェルトのおかげで、イスに振動がかかりにくく、長く大切にお使い頂けます。
最長20年のメーカー保証付き
成長く安心してお使いいただくため、リリーには通常5年のメーカー保証期間があります。
さらに、商品購入後フリッツハンセン社のメーカーホームページ「マイフリッツ・ハンセン」からメンバー登録をして頂くと、最長20年に保証期間を延長することができます。
長期間の保証がつけられるのは、品質に自信があるからできること。
デザイン、座り心地だけでなく、丈夫で長く使えるというところもリリーをおすすめしたい理由なのです。
保証期間が過ぎた後でも、万が一の場合はパーツ交換などに対応しておりますので、安心してお使いいただけます。