ポール・ケアホルムのこだわり・PK22の座り心地とコーディネート
1956年に発表された「PK22」は、PKシリーズの中でも代表的な名作であり、一番馴染みのあるラウンジチェアです。
そのPK22を生み出したデザイナー「ポール・ケアホルム」は、美しい家具をデザインするために、素材としてステンレススチールをいち早く取り入れました。
そんな、ポール・ケアホルムのデザインや素材に対するこだわり、そして「PK22」のかけ心地の良さやコーディネートについてご紹介します。
ポール・ケアホルムの美しさを追及したものづくり
自然素材へのこだわり
▲奥:自然界(木)の写真、手前:PK22のフレーム
ポール・ケアホルムのデザインにおけるコンセプトとして、“美しさの基準は自然界にある”という言葉を掲げていました。その言葉通り、彼の作品は、自然界から様々なインスピレーションを得てデザインされています。
上記のPK22のフレームは、まるで、自然界で枝が伸びていくような生命力さえも感じさせます。
シンプルで無駄がなく、本当に自然界に存在するようなデザインです。
このように、自然界にいた時の色合いや表情をできる限り残すというコンセプトをデザインするうえで一番大切にしてきました。
彼は、“自分を出すよりも天然素材のキャラクターを出すことの方が大事”と語るほど、天然素材の質感や風合いは、人が創り出したどんなものより美しいと考えています。
細部へのこだわり
画像のように、座面裏の見えないところまで美しくなるようパーツのデザインひとつひとつにまでこだわり仕上げています。これらのパーツは美しさを最優先し、航空機で使われているような高い精度と強度も兼ね備えています。
スチールへのこだわり
このようなこだわりから、無機質で工業的なイメージのスチールという素材を、“木材やレザーと同様に、スチールも風合いを増してゆく芸術的な素材だ”と捉え、高級な木材のように扱い、新しい構造を生み出しています。スチールの表面の光の屈折は自分の作品の重要な要素だと考えました。「理想とする美しさ」「スチールの美しさ」という強い信念をもって作品を見出したのです。
PKシリーズに使われている素材は「この世で手に入れられる1番いいもの」だからこそ経年変化を楽しみ、大切にお手入れしていくことで、新品とはまた違った美しさや愛着を見出しながら育てる喜びを味わうことができます。
Poul Kjaerholm(ポール・ケアホルム)
ポール・ケアホルムは、1929年にデンマーク北西部の田舎町で生ました。15歳で家具職人に弟子入りし、18歳でキャビネットメーカーのマイスターの称号を取得しています。現在では金属のイメージが強いポールケアホルムですが、もともとは木工職人としての技術を磨いていました。その後、コペンハーゲンの美術学校に入学します。在学中Yチェアのデザイナーとしてすでに活躍していたハンス J. ウェグナーのもとで、色々な事を学び、卒業制作でPK25を制作しています。学生が作ったと思えないクオリティの高さから、現在のフリッツ・ハンセンのPKシリーズのラインナップに加わっています。
ポール・ケアホルムについて詳しく知りたい方は
こちらのブログをご覧ください。
PK22特別モデル“LINEN(リネン)”
新たに発表されたPK22の特別モデル“LINEN(リネン)”も、ケアホルムのすべてのデザインに共通する自然素材へのこだわりに忠実に作られています。このリネンは、フリッツ・ハンセンのデザインチームによって特別に開発されたオリジナルテキスタイルです。先染めの糸を使うことで均一な色合いを作り出し、高い耐光堅牢度とマーチンデール値(耐摩耗試験数値)を兼ね備えています。さらに軽いサンディングで表面加工が施されており、なめらかでやわらかい質感に仕上げています。
この特別モデルは、スウェーデンと日本のみの限定商品です。PK22はそもそも別注モデルが存在しないため、大変貴重な試みです。
特別モデル“LINEN(リネン)”の2色のバリエーション
カラーバリエーションは現在ベージュ、チャコールの2色があります。2色ともポール・ケアホルムらしい自然の陰影にインスピレーションを得た個性あるバリエーションになっています。通常ご注文から4~5カ月ほど納期をいただきますが、できるだけ早くお客様にお届けできるように当店では即納在庫をご用意しております。
また、A5サイズくらいの小さめのサンプルではありますが、リネンの肌触りの良さや実際の色合いをご確認いただくために、生地サンプルの無料貸出も行っています。
PK22のやさしい座り心地
進化した構造
「PK22」はPK25の進化モデルとしてデザインされ、左右のフレームのみ(画像赤線部分)で座面と背もたれを支える担架のような構造です。PK25の膝裏と背もたれのステンレスのバー(画像青線部分)が座った時に心地よくないという弱点を克服するデザインとなっています。
身体にフィットするたわみ
身体に触れる部分は生地だけですが、考え抜かれた構造のため安心して身体をゆだねることができます。まるでハンモックに身体をあずけたようなやさしい座り心地です。
立ち上がりやすい構造
座面の美しい傾斜もケアホルムが自然からインスピレーションを受けた有機的なラインです。座面に傾斜がついていると、起き上がりにくいイメージがありますが、左右に入ったフレームを両手で持つことで腰があがりやすくなります。また、膝裏のバーがないためストレスなく立ち上がることができます。
コーディネート
~2脚編~
シンプルで軽やかなデザインのため、2脚並べてコーディネートすると有機的なラインの美しさが際立ちます。どの角度から見ても、木の枝が伸びるような脚の造形美をさらに楽しめます。PK愛好家は2脚使いでケアホルムの世界観を堪能している方が多いのも納得です。
~1脚編~
ラウンジチェアとしては座面高が35㎝と低めのため、低すぎるのではと思う方もいるのではないでしょうか?PK22は座面の傾斜と背もたれの絶妙な角度により、視線が自然と上向きになり、中材にウレタンを使用していないため沈み込みすぎることもなく、ソファに座った人との視線の高さが気になりません。
また、無駄がないデザインとコンパクトなサイズ感のため、シンプルな空間にすっと馴染んでくれます。北欧モダンが好きな方は「ラウンジチェアのあるリビング」としてご自宅に迎えてみてはいかがでしょうか。