ポール・ケアホルムの原点。一度見たら忘れられない究極のラウンジチェア『PK25』
1951年、後世まで語り継がれる伝説のラウンジチェアが誕生しました。
つくったのは、当時弱冠22歳のポール・ケアホルム。
なんとこの椅子は、彼が通っていた美術工芸学校の卒業制作としてデザインされたものだったのです。
「エレメントチェア」という呼び名でも知られるこの『PK25』は、ポール・ケアホルムがはじめて生み出した傑作です。
早熟な審美眼と卓越したセンスが、もうすでにこのころから彼には備わっていました。
一度見たら忘れられない、鮮烈で唯一無二のフォルム。
構成する要素は、一枚のスチール板からつくられる継ぎ目のないフレームと、麻ひものロープ。 徹底的にムダをそぎ落としたミニマルな要素で作りあげられていることへの称賛が、「エレメント(要素)」という呼び名にこめられているように思えます。
木製家具が主流だった時代に、たった二つの異素材でできたこれほど美しく機能的なラウンジチェアは、
まさしく家具の歴史を変えた革新的な存在だったことでしょう。
1952年春、卒業制作とは思えない圧倒的な完成度のこの椅子は世間の注目を大きく集め、
当時の師であったハンス J. ウェグナーの推薦もあって、ケアホルムはフリッツ・ハンセンに就職しました。
PK25が生まれていなければ、PK22やPK61、PK80といった数々の名作たちも、今私たちが目にすることはできなかったかもしれません。
素材にこだわり、自然で静謐な美を追求する、ケアホルムが生涯に渡って貫いた哲学。
その起源ともいえる作品が、PK25なのです。
ポール・ケアホルムは「自分が心から愛用できる家具だけを作る」という精神のもと、つくった家具を自邸で実際に使い、
納得したものだけを世に送り出しました。
「余白をつくる研ぎ澄まされた美しさ」と「くつろぎ感溢れる座り心地」を高次元で両立した唯一無二の家具。
それが、PKシリーズです。
美学が人へ、そして部屋へ、行きわたる名作椅子
自分を見つめなおすラウンジチェア
現代の世界的な有名デザイナーなど、クリエイターやアーティストにも愛用する人の多いPK25。
この椅子に座ると、ただくつろげるという以上に、作り手の哲学がひしひしと伝わってくる感じがします。
ポール・ケアホルムという巨匠の、モノづくりに対する誠実で研ぎ澄まされた感覚。
その原点ともいえる、若き日の彼の曇りなき熱意が込められた椅子だからこそ、
座っている人の思考まで冴えわたってくるような心地がするのかもしれません。
じっくり自分を見つめなおし、澄んだ時間が流れるラウンジチェアです。
ロープとスチールの織り成す格別のくつろぎ感
PK25はシャープな見た目でありながら、くつろぎ感抜群の座り心地です。
まず、座面と背面が麻のロープでできていることが大きなポイント。
すき間が生まれることで風通しがよくなり、夏場も蒸れずに長時間快適に座っていられます。
麻も選び抜かれた最上の素材で、やさしい肌触り。
それでいて、しっかりした張り感で体にフィットし、安定した姿勢ですごすことができます。
背中とひざの裏にあたるスチールのフレームにもロープが厚く巻かれており、固さをあまり感じません。
また、継ぎ目のないスプリングスチールのフレームによって、絶妙なしなりが生まれます。
広めの座面にどっかりと腰をかけると、体重が適度に分散されて、
軽やかな座り心地で長時間座っていても疲れを感じにくいです。
背面と座面の絶妙な傾斜もポイント。
背面の傾斜は肩甲骨のあたりまで背中をしっかりとホールドしてくれます。
座面の傾斜はついうたた寝してしまうような上向きの姿勢を作ってくれつつ、
ひざ裏のフレームに手をかけて楽に立ち上がれる、ちょうどよい角度に設計されています。
「人が使ってはじめて、その魅力が最大限に生かされる」という信念をケアホルムは若くして確立していたのですね。
差し込む光を美しく見せる、抜け感に溢れた空間
PK25は一脚そこにあるだけで、空間全体にまで洗練された空気感が広がります。
一頭の神獣がたたずんでいるかのような存在感は、部屋のシンボルとなるアート作品ともいえるかもしれません。
そんなインパクトがありながら、決して悪目立ちせず空間と柔らかに調和するのが、PKシリーズのすごいところ。
ポール・ケアホルムの家具は共通して重心が低く、また非常にスリムな線で描かれているため、
部屋に美しい余白を生み、圧迫感を感じさせないのが大きな特長です。
さらにPK25は、座面がロープでできているため抜け感が抜群で、空間にすっきりとした広がりをもたらします。
ロープから抜けてくる光と影の美しいコントラストまで計算しつくしていたポール・ケアホルム。
素材本来の魅力を最大限引き出したエレガントなフォルムが見せる柔らかな表情に、心を奪われます。
細部までつくりこまれたデザイン ~完璧主義者ポール・ケアホルムのこだわり~
一枚の鋼板からつくられる継ぎ目のないフレーム
PK25の最大の特徴ともいえる、継ぎ目のないスチールのフレーム。
たった一枚の鋼板に切れ目を入れて、折り返しながら立体的に立ち上げ、
脚・座面・背面のパーツを形成するというそのデザインは、天才的としか言いようがありません。
また、この形状で何十年座っても大丈夫なほど頑丈なのは、
ケアホルムの緻密な設計とそれを実現する職人の高度な技術の賜物です
(フレームの各所の角度がちょっとでも違えば、見た目だけでなく、しなりの心地よさも損なわれてしまいます。
何年も体重をかけ続けても形が崩れないよう、最高品質のスチールを使い、非常に高度な技術でミリ単位の曲げ加工を施しているのです)。
折り返しの部分は特に美しいポイント。
ノコギリでの切りすぎを防ぐために開けていた名残で今も残っている小さい丸い穴も、
デザインのアクセントになっています。
どんな細部を切りとっても絵になるようこだわり抜いたケアホルムの想いが伝わってくるようです。
直線の美しさが際立つ一方で、随所に柔らかな曲線が織り交ざる、そのバランスも見事。
研ぎ澄まされたシャープさがありながらも、自然美を感じられる柔らかな印象で、
お部屋にすっと馴染み調和する静けさをもっています。
脚先のカーブはやさしげな見た目の効果に加えて、床を傷つけにくくするという機能性も兼ね備えています。
何年使ってもハリのある、素材感豊かな麻ロープ
座面と背面のロープは、帆船にも使われる高度な技術によって、熟練の職人の手で時間をかけて張り込まれています。
また、体に触れる部分は麻でやさしい自然の風合いを感じられる一方で、芯にはナイロンが使われているため、耐久性が非常に高くなっています。
だからこそ長年使ってもヨレヨレにたわむことはなく、浅く腰かけても深く腰かけても、最上の張り感がずっと続くのです。
マットクローム仕上げが生む、落ち着いた光沢
フレームのスチールはマットクローム仕上げが施されており、
通常のクローム仕上げのようにツルツルの鏡面ではなく、艶消しのマットな質感となっています。
錆や色褪せを防ぎつつ、光の反射は抑えることで、
スチールがもつ風合いをよりしとやかに感じられ、お部屋の落ち着いた雰囲気を高めます。
仕上げにまで徹底的にこだわったポール・ケアホルムの完璧主義者ぶりが伝わってきますね。
デザイナー:ポール・ケアホルムの美学
ポール・ケアホルムは、1929年にデンマーク北西部の田舎町で生まれました。
15歳で家具職人に弟子入りし、18歳でキャビネットメーカーのマイスターの称号を取得。
ハンス J. ウェグナーのもとで様々なことを学び、バウハウスからも大きな影響を受けていました。
デンマークのクラフトマンシップの精神を継承しながらも、型にはまらない異色の才を示し続け、
北欧モダン家具の歴史に大きく名を残したデザイナーです。
PKシリーズは、51歳という若さで早世したケアホルムに敬意を表し、
1982年からフリッツ・ハンセンによって製造が開始されました。
彼の生み出した名作の数々は時代を超えて多くのファンに愛され、
現代の名だたるデザイナーや建築家たちからも、非常に高い評価を得ています。
時間と空間をつくる家具デザイン
ポール・ケアホルムは、自らを「家具建築家」と称することを好みました。
彼は“ただ通り過ぎるだけでなく、明確な人間関係が構築される空間”を目指し、
家具が空間に与える作用と、そこで生まれる人間の営みまでをも見据えて、ひとつひとつの家具を設計していったのです。
▼生前の自邸の写真 奥:PK11(チェア) 手前:PK31(ソファ)
ケアホルムのデザインは、徹底的に無駄をそぎ落とし、
構造を明確にすることで素材ひとつひとつの美しさが際立っています。
“家具が明晰な美しさを持っていれば、そこで過ごす人々の関係性も風通しの良い澄んだものになる”
そんなことを彼は考えていたようです。
美の追求
PKシリーズには、ポール・ケアホルムによる徹底的な美の追求が見てとれます。
家具は暮らしの中で、一般の多くの人に使われる実用的な工業製品です。
しかし同時に、ケアホルムは家具をつくるうえで、自らの美学を表現することにも一切の妥協を許しませんでした。
“美的感覚やデザインに価値を感じないのなら、段ボールに座っているようなものだ”
ケアホルムの家具デザインの背景には、このような確固たる哲学がありました。
▼1952年 チューリッヒの応用美術展の写真(右奥にPK25、手前にはPK60が並べられ、左奥にはPK0の座面が裏返しで吊り下がっている)
ポール・ケアホルムの大きな功績の一つは、それまで家具製作にあまり使われてこなかった木以外の素材を、非常に美しく機能的な素材としてデザインに取り入れたことです。
PKシリーズを象徴する代表的な素材は「スチール」。
ケアホルムは、“木材やレザーと同様に、スチールも風合いを増してゆく芸術的な素材だ”と考えました。
その厚みや表面の加工方法にいたるまで何度も試行錯誤をくり返し、
無機質で冷たい素材と思われていたスチールが、本当は木にも劣らない美しい素材であることを示したのです。
▼森の写真パネルを背景に、PK22のフレームがずらり。ケアホルムが自然と調和するデザインを追い求めていたことがわかる1枚。
ケアホルムの作品は、他の木製家具とは異質な素材とデザインでありながら、
有機的で、どこか自然の美を感じさせる豊かな表情をもっています。
そこには、“美しさの基準は自然界にある”と常に考えていた、彼の自然への憧憬が表れています。
卓越したセンスで描かれた曲線美。選び抜かれた素材のなめらかな手ざわり。澄明な構造と生き生きとしたプロポーション。
木々の伸びやかな幹や枝のような、自然の中に遥か昔から息づいている根源的な美しさを、
家具デザインを通して私たちに伝えてくれているように思えます。
リ・デザインの精神
ケアホルムは、偉大な先人のデザイナーや建築家に敬意を払い、彼らの作品を熱心に研究していました。
そのうえで、より一層そのデザインの本質に迫り、洗練されたものを生み出そうとする「リ・デザイン」の精神で、
先人たちを超えていこうと常に挑戦していたのです。
PK25も、ハンス J. ウェグナーが1950年にデザインした「フラッグ・ハリヤードチェア」に大きなインスピレーションを受けて制作されました。
関わりのあったオーレ・ヴァンシャーやハンス J. ウェグナーといった北欧モダンの先駆者や、
ミース・ファン・デル・ローエをはじめとするバウハウスの偉大な先人たちから大きな影響を受け、
伝統と歴史の流れにしかと身を置きながら、常に新しい価値を生み出し続けたポール・ケアホルム。
彼の作品には、デンマーク家具の歴史と一人の人間の生き様が深く刻み込まれています。
ポール・ケアホルムについてもっと知りたい方はこちら
PK25のコーディネート例
長閑な春の陽射しが伸びやかに映えるリビングルームに
▲PK25(左)・PK31(正面奥,ソファ)・PK33(手前,ローテーブル)・
PK61(右奥,コーヒーテーブル)
静かな品のある、シンプルで心地よい空間に
▲PK25(右奥)・PK31(左,ソファ)・PK61(中央,コーヒーテーブル)・
PK80(右手前,デイベッド)
サイズ
高さ75 cm / 幅69 cm / 奥行き73 cm / シートの高さ40 cm
張地・カラーバリエーション
麻ロープのカラーを2種類からお選びいただけます。
ナチュラル
ブラック
FRITZ HANSENの公式サイトにて、張地・カラーのシミュレーションやAR機能を使った設置想定ができます。
ぜひお試しください!
https://www.fritzhansen.com/ja/categories/by-series/pk25/pk25
お手入れの仕方・お取り扱いの注意点
■マットクローム仕上げスチール(フレーム)
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/chrome
■麻ロープ(座面・背面)
日々のお手入れは柔らかい布で乾拭きをしてください。
汚れを落とす際は無添加の固形石鹸を砕いてお湯でとき、布に染み込ませてやさしく磨いてください。
その後水拭きで石鹸を落とし、最後に乾拭きで水分をしっかりと拭き取ってください。
在庫状況・納期・搬入について
PK25は現在国内在庫がなく、海外からの取り寄せとなっております。
納期の目安は約5か月です。
組み立て済み・段ボール梱包にてお届けし、設置・残材処理まで無料で行います。