一緒に歳を重ねたいソファ。時代を超える名作「PK31」
ポール・ケアホルムがデザインした唯一の置き型ソファ『PK31』(1958年)は、「北欧ソファの最高傑作」ともいえる名作です。厳粛な存在感がありつつ、決して主張しすぎない慎ましさをあわせ持った佇まい。直線的なラインでかたどられたレザー張りのシート部分に対し、曲線美の光る、エレガントなスチールの脚部。ケアホルムの研ぎ澄まされた感性が結集したデザインです。
「部屋のサイズに合わせた家具を作りたい」というケアホルムの要望を実現したPK31は、1人掛け・2人掛け・3人掛け...といったように、好きなサイズをオーダーできます。
シートが一直線に連なっていくような、連結型の構造。座面・背面のクッションとそれを支えるフレーム、そしてひじ掛けの厚みがどれも均整がとれており、心地のいいリズムが繰り返されていく、洗練された音楽のような美的センスを感じられます。
ケアホルムもPK31を自邸で愛用していましたが、立ち上がりのしやすさ・座面の高さ・奥行きまで計算しつくされたこのソファは、左脚に障がいを抱えていた彼にとっても、本当に心安らぐ唯一無二のソファだったに違いありません。最上のレザーを惜しげもなく使ったPK31は、クッションのふくらみに浮かぶ美しい陰影や、年を重ねるごとに風合いを増していく素材の美しさを、最も感じさせてくれる作品と言えるでしょう。一緒に歳をとっていきたくなるような、「一生モノ」のソファ。次の世代に受け継いでいきたい、時代を超えた名作家具です。
一生忘れられない、心を整える座り心地
PK31は、体感した人だれもが、その極上の座り心地に驚かされます。シートは固すぎず柔らかすぎず、各部の角度や高さも計算しつくされており、自然と落ち着いた姿勢で、疲れることなく長時間くつろぐことができます。静かに目を閉じて季節の音を感じたり、大切な人と横に並んで心を通わせたり、身体の中に気品ある空気が満ちていくような、特別な時間が流れるソファです。
人肌を柔らかく受け止める、最高級のレザー
座り心地について、まず挙げるべきポイントは、シートに張られたレザーです。PK31には、「この世で手に入れられる1番いいものを使う」というケアホルムの遺志を継いで、選び抜かれた最高級のレザーが使われており、美しさと耐久性を兼ね備え、「ありのまま」の自然な風合いが年を重ねるごとに増していきます。
▲PK31でおすすめの「グレースレザー」はベジタブルタンニン(植物由来のオイル)で丁寧になめされているため、レザー本来のなめらかさが年々増していく魅力をもっています。未加工の自然な表面のためナチュラルマーク(皮本来のシワなどの模様)があり、時間の経過とともに美しい自然なツヤ感が生まれ、豊かな経年変化を楽しめます。
ずっと触っていたくなるような、しっとりとなめらかな肌触りで、通気性もよく蒸れにくい。レザーなのに不思議とシルクのようなしっとり感。1日の中で長時間心安らかに過ごすことのできる、極上の質感です。
体重を心地よく支える、シートの中身
座面のクッションの中には、羽毛とウレタンフォームが入っています。
羽毛は空気を多く含んでおり、復元力の高い素材です。心地よい反発性があり、ほどよい柔らかさで沈み込みすぎず、身体をしっかりと支えてくれます。またクッションの下の座枠には、複雑な構造のスプリング(ばね状のパーツ)が入っています。
ほどよい弾性があり、座った時の底当たりを全く感じないような、緻密な設計。構造まで徹底的に考え抜いた、ケアホルムのこだわりが詰まっています。
背面のクッションの中にも、羽毛が綿製のカバーに包まれて入っています。絶妙な柔らかさと厚みで、使うほど体に馴染むクッション。身を預ければ心がほどけていくような、安心感を与えてくれます。
▲背面のクッションの底面には空気抜きの穴が設けられていて、もたれかかった時に絶妙に空気が抜け、やさしい背当たり感。
計算しつくされたシートの設計
シートの高さは38cmと低めで、シートの奥行は約45cmとほどよい広さ。
座った時に体のラインに絶妙にフィットして、自然と居ずまいが正され、凛とした姿勢を保つことができます。
背面の高さもシートの奥行と同じ約45cm。肩甲骨のあたりまでしっかり背中を支えながら、空間に圧迫感を与えない絶妙な高さに設計されています。
▲背面のクッションを支えるフレームは腰の上あたりの位置で約10度角度が付いており、より心地よい姿勢でいられるよう考えられています。
▲ひじ掛けの高さも丁度よく、腰かけたときに最も自然に腕を休められる高さ。ひじ掛けの幅は5.5cmで、立ち上がる時に手でつかんだ時のフィット感まで考慮されています。
研ぎ澄まされた空気漂う、格別の空間へ
ケアホルムは「家具の建築家」と自らを名乗り、常に空間全体のことを考えていました。
家具そのものも一つの建築であるように、すき間の作り方や直線と曲線のバランス、均整の取れたリズムを感じる幾何学的な部品の配置など、構造自体の美しさまで丁寧に表現することを彼は志していました。
抜け感あふれるエレガントな脚部。背もたれのフレームの間に空けられた、絶妙なすき間。どこか浮遊感さえ漂うデザインで、空間に軽やかで澄んだ広がりを与えてくれます。
「家具が部屋に置かれ、その周りを人が移動する」ということを常に意識して空間と家具デザインについて考えていたケアホルム。
360度どこから見ても美しく、まさに「千両役者」と呼ぶにふさわしいソファです。
光が当たった時の表情の美しさも、PKシリーズの大きな魅力です。
PK31のレザーシートの表面に浮かび上がる深くてやさしい陰影と、マットな質感に仕上げられたスチールの脚部の静けさを湛えた光沢感。
静謐で美しい格別な空気感が、空間を隅々まで包み込んでいくようです。
細部までつくりこまれたデザイン ~完璧主義者ポール・ケアホルムのこだわり~
一切のムダがない、明瞭な構造美
PK31は、背面・座面ともにクッションを取り外すことが可能です。
クッションを取り外すと現れる、ベージュの布張りの縫製まで端正で、普段は見えないところまで美しく仕上げるケアホルムの完璧主義者ぶりが伝わってきます。
それ以外のパーツはボルトとナットで連結されており、分解することもできますが、少しでもネジの角度がずれると組みあがらないほど、ミリ単位の精密な設計がされています。
静かで品のあるスチールベース
ベースのスチールはマットクローム仕上げが施されており、通常のクローム仕上げのようにツルツルの鏡面ではなく、艶消しのマットな質感となっています。
錆や色褪せを防ぎつつ、光の反射は抑えることで、スチールがもつ風合いをよりしとやかに感じられ、深みのある美しさが空間に広がります。上品さと静けさを兼ね備えたマットな質感を、ポール・ケアホルムはいつも大切にしていました。
スチールの曲線美は彼の真骨頂。エレガントでありながら自然な柔らかさを感じさせてくれる意匠です。
しかしその見た目の美しさの裏には、非常に高度なクラフツマンシップが詰まっています。なめらかなカーブを描く脚部に見られる、高度な金属加工の技術。たった2つのボルトで、それぞれの脚と長い1本のフラットバーがつながれているだけなのに歪みやズレが全くなく、何十年と使っても、安定性は全く変わりません。
木工職人だった時期(15~18歳の頃)に、夜は鉄工商でアルバイトをしていたケアホルム。金属加工への並々ならない造詣の深さと、素材への探求心に胸を打たれます。
▲脚部はあえて前脚より後ろ脚の方が少し長くなっています。座った時に後ろ側に荷重がかかることへの対策に加え、遠近感を考慮した見た目のバランスという点でも、非常によく考えられたデザインですね。
デザイナー:ポール・ケアホルムの美学
ポール・ケアホルムは、1929年にデンマーク北西部の田舎町で生まれました。
15歳で家具職人に弟子入りし、18歳でキャビネットメーカーのマイスターの称号を取得。
ハンス J. ウェグナーのもとで様々なことを学び、バウハウスからも大きな影響を受けていました。
デンマークのクラフツマンシップの精神を継承しながらも、型にはまらない異色の才を示し続け、北欧モダン家具の歴史に大きく名を残したデザイナーです。
PKシリーズは、51歳という若さで早世したケアホルムに敬意を表し、1982年からフリッツ・ハンセンによって製造が開始されました。
彼の生み出した名作の数々は時代を超えて多くのファンに愛され、現代の名だたるデザイナーや建築家たちからも、非常に高い評価を得ています。
時間と空間をつくる家具デザイン
ポール・ケアホルムは、自らを「家具建築家」と称することを好みました。
彼は“ただ通り過ぎるだけでなく、明確な人間関係が構築される空間”を目指し、家具が空間に与える作用と、そこで生まれる人間の営みまでをも見据えて、ひとつひとつの家具を設計していったのです。
▼生前の自邸の写真 奥:PK11(チェア) 手前:PK31(ソファ)
ケアホルムのデザインは、徹底的に無駄をそぎ落とし、構造を明確にすることで素材ひとつひとつの美しさが際立っています。
“家具が明晰な美しさを持っていれば、そこで過ごす人々の関係性も風通しの良い澄んだものになる”
そんなことを彼は考えていたようです。
美の追求
PKシリーズには、ポール・ケアホルムによる徹底的な美の追求が見てとれます。
家具は暮らしの中で、一般の多くの人に使われる実用的な工業製品です。
しかし同時に、ケアホルムは家具をつくるうえで、自らの美学を表現することにも一切の妥協を許しませんでした。
“美的感覚やデザインに価値を感じないのなら、段ボールに座っているようなものだ”
ケアホルムの家具デザインの背景には、このような確固たる哲学がありました。
▼1952年 チューリッヒの応用美術展の写真(右奥にPK25、手前にはPK60が並べられ、左奥にはPK0の座面が裏返しで吊り下がっている)
ポール・ケアホルムの大きな功績の一つは、それまで家具製作にあまり使われてこなかった木以外の素材を、非常に美しく機能的な素材としてデザインに取り入れたことです。
PKシリーズを象徴する代表的な素材は「スチール」。
ケアホルムは、“木材やレザーと同様に、スチールも風合いを増してゆく芸術的な素材だ”と考えました。
その厚みや表面の加工方法にいたるまで何度も試行錯誤をくり返し、無機質で冷たい素材と思われていたスチールが、本当は木にも劣らない美しい素材であることを示したのです。
▼森の写真パネルを背景に、PK22のフレームがずらり。ケアホルムが自然と調和するデザインを追い求めていたことがわかる1枚。
ケアホルムの作品は、他の木製家具とは異質な素材とデザインでありながら、有機的で、どこか自然の美を感じさせる豊かな表情をもっています。
そこには、“美しさの基準は自然界にある”と常に考えていた、彼の自然への憧憬が表れています。
卓越したセンスで描かれた曲線美。選び抜かれた素材のなめらかな手ざわり。澄明な構造と生き生きとしたプロポーション。
木々の伸びやかな幹や枝のような、自然の中に遥か昔から息づいている根源的な美しさを、家具デザインを通して私たちに伝えてくれているように思えます。
リ・デザインの精神
ケアホルムは、偉大な先人のデザイナーや建築家に敬意を払い、彼らの作品を熱心に研究していました。
そのうえで、より一層そのデザインの本質に迫り、洗練されたものを生み出そうとする「リ・デザイン」の精神で、先人たちを超えていこうと常に挑戦していたのです。
また、彼の作品は後世のデザイナーにも大きな影響を与えています。例えばFRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)から販売されている『LISSONI(リッソーニソファ)』には、PK31の影響が如実に表れています。デザイナーのピエロ・リッソーニはイタリア人ですが、彼は自宅でポール・ケアホルムの家具を愛用しているそうです。
ケアホルムが残したデザインは、デンマーク国内にとどまらず、現代で活躍するの世界中の多くのデザイナーにとって、不朽のお手本なのですね。
関わりのあったオーレ・ヴァンシャーやハンス J. ウェグナーといった北欧モダンの先駆者や、ミース・ファン・デル・ローエをはじめとするバウハウスの偉大な先人たちから大きな影響を受け、伝統と歴史の流れにしかと身を置きながら、常に新しい価値を生み出し続けたポール・ケアホルム。
彼の作品には、デンマーク家具の歴史と一人の人間の生き様が深く刻み込まれています。
>>ポール・ケアホルムについてもっと知りたい方はこちら
PK31のコーディネート例
研ぎ澄まされた静けさに包まれたリビングシーンに
▲PK31(左,ソファ)・PK61(中央,ローテーブル)・PK25(奥,ラウンジチェア)・PK80(右,デイベット)
シックな品格に包まれたお部屋に
▲PK31(右,ソファ)・PK61(中央,ローテーブル)・Jut Cabinet(奥,キャビネット)・PK80(左,デイベット)・KAISER idell(奥,テーブルランプ)・KAISER idell(左手前,フロアランプ)
季節の光を柔らかく迎える、特別な空間に
▲PK31(奥,ソファ)・PK25(左,ラウンジチェア)・PK33(手前,スツール)・PK61(右奥,ローテーブル)
サイズ
1人掛け(ラウンジチェア)
高さ 76cm / 幅 76cm / 長さ 76cm
シートの高さ 38cm / アームの高さ 48cm
2人掛け
高さ 76cm / 幅 137cm / 長さ 76cm
シートの高さ 38cm / アームの高さ 48cm
3人掛け
高さ 76cm / 幅 198cm / 長さ 76cm
シートの高さ 38cm / アームの高さ 48cm
張地・カラーバリエーション
CONNECTのおすすめは「グレースレザー(ダークブラウン)」または「グレースレザー(ウォルナット)」です。
グレースレザー
ブラック
ダークブラウン
ウォルナット
チェスナット
グレースレザーはベジタブルタンニン(植物由来のオイル)でなめされているため、レザー本来のなめらかな手ざわりが魅力的です。未加工の自然な表面のためナチュラルマーク(皮本来のシワなどの模様)があり、時間の経過とともに美しい自然なツヤが生まれ、豊かな経年変化を楽しめます。
なかでもCONNECTがおすすめするカラーは「ダークブラウン」または「ウォルナット」です。
「ダークブラウン」は、PK31のエレガントな風格を引き立てつつ、静かな奥ゆかしさが感じられるカラー。上品で落ち着いたレザーの表情と、そぎ落とされた美を物語るステンレスの見事なコントラストが空間に浮かび上がります。
「ウォルナット」は光を柔らかく受け止め、穏やかな空気感を生み出すカラー。
自然とみんながそこに集まりたくなるような、やさしさに溢れた憩いの空間が出来上がります。
PK31その他の張地
オーラレザー
ブラック
ダークブラウン
ウォルナット
コニャック
エンブレイスレザー
チョコレート
コンクリート
ラスティックレザー
ラスティック
ナチュラルレザー
ナチュラル
FRITZ HANSENの公式サイトにて、張地・カラーのシミュレーションやAR機能を使った設置想定ができます。
ぜひお試しください!
https://www.fritzhansen.com/ja/categories/by-series/pk31/pk31
お手入れの仕方・お取り扱いの注意点
■マットクローム仕上げスチール(脚部)
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/chrome
■レザー(座面)
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/leather
在庫状況・納期・搬入について
PK31は現在国内在庫がなく、海外からの取り寄せとなっております。
納期の目安は約5か月です。
組み立て済み・段ボール梱包にてお届けいたします。
配送・設置・残材処理まで無料でお引き受けいたします。