フィン・ユールの最高傑作チーフテンチェアをご紹介します
1949年に発表されたフィン・ユールの最高傑作とされる「チーフテンチェア」は、フィン・ユールが自宅の暖炉の前でくつろぐためにデザインされました。
大きく優美で存在感のあるフォルムは、まさに「チーフテン」(酋長:未開の部族の長)の名にふさわしい威厳と美しさを合わせ持っています。
この椅子が有名になったのは、コペンハーゲン家具職人ギルド展に出展した際、デンマークのフレデリック国王の目にとまり、国王自ら着座したことがきっかけでした。当初この椅子は、独創的なデザインから賛否両論がありましたが、それは同時に、それまでのデンマーク家具デザインの伝統を刷新するものでもありました。
まるで彫刻のように美しい造形
フィン・ユールは、芸術的感覚と独自のデザインで知られており、このチーフテンチェアもまた、彼らしい特徴的な造形をしています。
▲ウォルナット材のチーフテンチェアに「コニャック」カラーの「ヴァコナ」レザー張り。
▲オーク材(透明オイル)のチーフテンチェア、カラー「90」の「Vegetal」レザー張り。彫刻:Anders Ruhwald / ギャラリー:Officine Saffi。
外枠は、直線的な木材の使われ方をしているのに対し、背もたれやアームなど体に接する部分の木材は、細く繊細でゆるやかに曲線を描いています。これは、人体の構造は直線とするところはなく、座ったときに違和感なく体を支えられるよう設計されているのです。
包み込むほどの大きな背もたれや美しいアームの曲線等その一つ一つが華麗で、彼の斬新なアイデアと安定した構造体を見事に調和させた秀逸な作品です。
▲ダークオークのチーフテンチェア、カラー「90」の「Vegetal」レザー張り
フィン・ユールは、実用的な構造で考えるのではなく、彫刻家のような心構えで家具を形作りました。動きと生命力のある家具をデザインすること。家具の構造的に重要な要素と座っている人の両方を、まるで浮いているかのように見せることに誇りを持っていました。
別名『エジプトチェア』
▲ウォルナット材のチーフテンチェア、「インディアンレッド」のレザー張り
大きな背もたれやアームと同じく、大きな特徴である、後脚と背もたれを両側から支える三角形をしたフレームは、エジプトの壁画に残された女王の椅子と同じ構造を持っています。そのため別名「エジプトチェア」とも呼ばれています。
圧倒的な存在感を放つ優美なデザインが生まれたとき
さて、この圧倒的な存在感を感じさせるチーフテンチェアが、どのようにしてデザインされたのか。のちのフィン・ユールは、こう話しました。
「私は1949年の春のある日、チーフテンチェアを描き始めました。私は家にいて、午前10時頃に、4本の縦線を何かにつないだ小さなスケッチを描き始めました。午前2時か3時までには描き終えました。でも、実際のところ、あの椅子をデザインするのにどれくらいの時間がかかったかはわかりません。もしかしたら、もっと大きなものをデザインしたいという漠然とした考えが以前からあったのかもしれません。小さくて便利な椅子がたくさんあったので、もう少し豪華なものをデザインしたかったのかもしれません…」
サイズや素材の詳細
材質と仕様:ウォールナット材またはオーク材、張り地は厳選された高級レザータイプで色がお選びいただけます。
天然素材のレザーは、独特の高級感を醸し出し、優雅に経年変化します。House of Finn Juhlは、厳選された牛や雄牛の皮を使用し、布張りする際には最大限の敬意を持って扱います。高品質のレザーを確保し、才能ある職人と共にFinn Juhlの家具の品質を完成させています。
サイズ:W1000×D880×H925/SH345(約mm)
デザイナー: FINN JUHL(フィン・ユール)
ブランド: HOUSE OF FINN JUHL(ハウス・オブ・フィンユール)
メンテナンス: オイル塗装のため木部のお手入れは乾拭きや専用オイルで行います。革部分も専用のクリーナーでメンテナンスすることで美しさを保ちます。
Finn Juhl(フィン・ユール)とは
1912年デンマークのコペンハーゲン生まれ。1914年生まれのハンス J.ウェグナーやボーエ・モーエンセンと同世代のデザイナーです。フィン・ユール独特の発想と造形力を評価され、数々の素晴らしい作品を生み出したデザイナーであり『デンマークモダンの父』とも称されています。
彼は、幼い頃から美術に興味を持ちますが、父親から芸術の道に進むことを反対され、建築家になるべくコペンハーゲンの王立芸術アカデミーの建築学科に入学しました。そこで建物の設計やインテリアデザインを通じて現代美術への関心を持ち、独自の発想をもとに家具デザインを手がけるようになりました。
大学在学中に、建築家のヴィルヘルム・ラウリッツェンの事務所に勤務したフィン・ユールは、1937年の家具職人ギルド展示会で出展したのをきっかけに、自身のデザインスタジオを設立しました。
HOUSE OF FINN JUHL(ハウス・オブ・フィンユール)とは
HOUSE OF FINN JUHL(ハウス・オブ・フィンユール)は、2001年フィン・ユールの夫人ハンネ・ヴィルヘルム・ハンセンにより、フィン・ユール家具の製造と復刻生産に関する権利を与えられており、デザイン当初に意図したのと同じ価値と品質で家具を製造しています。このアプローチがなければ、フィン・ユールらしさである特徴的な仕上げと繊細な造形を実現することは不可能だからです。
最高品質の素材は、何世代にもわたって続くエレガントで快適で耐久性のある家具を作るための基礎です。そのため、最高級の素材を厳選することが、House of Finn Juhlの最大の焦点となっています。
まとめ
今日、チーフテンチェアは、1950年代の米国におけるデンマークモダン運動の最も重要なアイコンとして認識されています。このため、フィン・ユールはデンマークモダンの創始者と呼ばれています。
「小さくて便利な椅子がたくさんあったので、もう少し豪華なものをデザインしたかったのかもしれません…」と言うユールの言葉通り、サイズと贅沢さが圧倒的なこの椅子を活かすためには、大きな空間が必要かもしれません。しかし、フィン・ユールのデザインであり、また彼の全盛期の最高傑作とも呼ばれるものであることが、大きな空間よりもさらに大きな価値を感じさせてくれるのではないでしょうか。